腹膜透析のKt/V・Fast PET|検査法・計算・評価

RenalNote 腹膜透析のKt/V・Fast PET計算|週間透析量と腹膜機能を確認

腹膜透析(PD)の定期評価で迷いやすい、週間Kt/Vの検体採取・計算と、Fast PETの実施・判定を1ページにまとめます。

検査何を評価するか主な結果
週間Kt/V尿素をどれだけ除去できたか腹膜・残存腎・総週間Kt/V
Fast PET腹膜を小分子が移動する速さ4時間D/P Cr、D/D0 glucose、必要時は4時間除水量

Kt/Vだけで「透析十分」と判定しない。Fast PETだけで「腹膜機能不全」と判定しない。 症状、体液量、尿量、栄養状態、電解質、除水量、経時変化と統合して処方を見直します。

例示症例

82歳男性、身長170cm、体重65kg。現行の腹膜透析を問題なく継続できており、浮腫を認めず体液バランスも良好です。処方を考える際は、透析効率だけでなく本人の生活スタイルも重視しています。

以下では、同じ教育用症例について週間Kt/VとFast PETを順に計算します。Kt/V用採血とFast PETの4時間採血は別の検体です。

まず検査の全体像

週間Kt/V

  1. 通常のPD処方を行った24時間の全排液を回収する
  2. 残存尿があれば、同じ24時間の全尿を回収する
  3. 回収期間を代表する時点で血清BUNを測定する
  4. 排液量・排液UN・尿量・尿中UNと尿素分布容積Vから計算する

Fast PET

  1. 施設手順に従い、前貯留・先行液の完全排液を確認してから、2.5%ブドウ糖透析液(または同等液)2,000mLを注液する
  2. 4時間の貯留時間を正確に記録する
  3. 4時間後に全量排液し、混和して検体を採取する。同時期に採血し、除水量も評価する場合は排液量を記録する
  4. 4時間D/P Crを主指標として腹膜溶質移動速度を評価する

検体採取法、使用液、注液量、採血時刻は施設で統一してください。規格が違う検査結果を同じ基準で比較すると、見かけの変化を生じます。

腹膜透析の週間Kt/V

腹膜透析の週間Kt/V:24時間検体採取、計算式、結果の評価
保存用まとめ:画像をタップすると拡大できます。例示症例は本文に掲載しています。

腹膜透析 週間Kt/V

24時間排液・蓄尿から腹膜、残存腎、総Kt/Vを計算

mL/day
mg/dL
mg/dL

計算結果

必要な項目を入力してください

総週間Kt/V —
腹膜週間Kt/V —
残存腎週間Kt/V —
計算に使用したV —

結果の位置づけ

≥ 1.7 国内ガイドラインで示される総週間Kt/Vの現実的な目安
< 1.7 回収条件を確認し、症状・体液量・栄養・残存腎機能とともに処方を再評価

ISPD 2020は単一の数値だけで透析の十分性を決めず、患者ごとの目標と臨床所見を重視しています。

式と注意点を確認

使用式
腹膜週間Kt/V = 7 ×[24時間排液量(L)× 排液UN ÷ 血清BUN]÷ V(L)。残存腎週間Kt/V = 7 ×[24時間尿量(L)× 尿中UN ÷ 血清BUN]÷ V(L)。総週間Kt/V = 両者の合計。

総週間Kt/V 1.7以上は国内ガイドラインの現実的な目安ですが、合否判定の絶対線ではありません。症状、体液量、栄養、残存腎機能、電解質・酸塩基状態と統合して評価します。

検体の集め方

  • 24時間排液:CAPD・APDを含め、その24時間に排出した透析液をすべて回収
  • 24時間尿:残存尿がある場合は同じ時間帯の全尿を回収
  • 採血:回収期間の平均的なBUNを反映する時点を選択。APDやdry dayでは時間変動に注意
  • 測定:十分に混和した排液・尿から尿素窒素濃度を測定し、総量を正確に記録

まず回収条件を確認:回収漏れ、時間のずれ、採取日だけの処方変更、排液量の転記ミスはKt/Vを大きく動かします。

無尿では残存腎Kt/Vを0としますが、蓄尿未実施などの「未評価」では腹膜分だけを表示し、総週間Kt/Vは判定しません。

計算式

腹膜週間Kt/V = 7 ×[24時間排液量(L)× 排液UN / 血清BUN]/ V(L)

残存腎週間Kt/V = 7 ×[24時間尿量(L)× 尿中UN / 血清BUN]/ V(L)

総週間Kt/V = 腹膜週間Kt/V + 残存腎週間Kt/V

Vは尿素分布容積で、概ね総体水分量に相当します。ツールは滋賀腎・透析研究会のPD効率計算と同様に成人Watson式を既定とし、施設で別に求めたVの直接入力も選択できます。

例示症例で計算

検体・患者情報入力値
82歳男性、身長、体重170cm、65kg
血清BUN、Cr48.0mg/dL、5.25mg/dL
24時間PD排液量4,350mL※
排液UN、Cr25.7mg/dL、1.23mg/dL
24時間尿量800mL
尿中UN、Cr366mg/dL、72.1mg/dL

週間Kt/Vの計算に使用するのはBUN、排液量・排液UN、尿量・尿中UN、尿素分布容積Vです。この計算では血清・排液・尿Crは使用しません。

計算結果値
Watson式によるV34.8L
腹膜週間Kt/V0.47
残存腎週間Kt/V1.23
総週間Kt/V1.70

※元の回収記録は排液重量4,350gです。この例では既存計算との照合のため4,350mLとして入力しています。実臨床では、バッグの風袋や施設の換算方法を確認し、規定された排液量を入力してください。

丸め前の総週間Kt/Vは約1.6977です。「約1.70」は表示上の丸めであり、厳密な1.7以上の達成判定ではありません。測定・V推算の誤差も踏まえ、この微小差だけで処方変更を決めません。

結果の評価

日本透析医学会2019では、残存腎機能を含む総週間尿素Kt/V ≥1.7が現実的な目安として示されています。ただしISPD 2020は、単一の数値で透析の十分性を決めない立場です。

確認する項目見直すポイント
症状食欲、悪心、倦怠感、掻痒、認知・睡眠
体液量浮腫、血圧、体重、呼吸状態、日々の除水量
残存腎機能尿量、腎クリアランス、その低下速度
栄養・代謝体重変化、食事摂取、Alb、K、HCO3−、リン
治療実態実施状況、注排液トラブル、生活上の負担

Kt/Vが低いとき:①回収・実施状況を確認し、②臨床的に不足があるかを評価し、③必要なら注液量・交換回数・貯留時間・APD条件などを個別に調整します。

Vの推算に注意

Watson式は年齢・身長・体重・性別から総体水分量を推算しますが、浮腫、肥満、るいそう、筋肉量低下では誤差が大きくなり得ます。判定が変わる場合は体組成測定や施設の評価法と照合してください。

Fast PET(簡易腹膜平衡試験)

Fast PET:検査手順、4時間D/P Cr・D/D0 glucoseの4分類基準と処方判断
保存用まとめ:古典的分類は参考値です。本文の解釈・限界と施設基準を併せて確認してください。

Fast PET

4時間D/P Cr・D/D0 glucoseを計算。除水量は任意で併記

mg/dL
mg/dL
mg/dL
mg/dL
mL
mL

計算結果

必要な項目を入力してください

4時間D/P Cr —
D/P Cr分類 —
4時間D/D0 glucose —
D/D0分類(補助) —
4時間除水量(任意) —

古典的D/P Cr分類

> 0.34–0.50 Low / slow
> 0.50–0.65 Low average
> 0.65–0.81 High average
> 0.81–1.03 High / fast

Crとglucoseの分類が異なる場合はCrを優先します。D/P Crは連続値として前回値との変化も確認します。

式と注意点を確認

使用式
4時間D/P Cr = 4時間排液Cr ÷ 血清Cr。4時間D/D0 glucose = 4時間排液糖 ÷ 0時間透析液糖。除水量 = 4時間排液量 − 注液量。

D/P Crを主判定とします。古典的4分類は参考であり、施設集団の基準、測定法、経時変化、除水量と併せて評価してください。Fast PETだけで限外濾過不全やEPSを診断しません。

Crは4時間後の血清と排液で同じ単位、glucoseはD0と4時間で同じ単位を入力します。レギュニールLCa 2.5など、混合後のブドウ糖濃度が2.27%の製剤では、D0 glucoseの理論値として2,270 mg/dLを使用できます(PMDA電子添文)。

検査室へ確認:排液Crの糖干渉補正の要否は測定法に応じて確認します。補正済みの値を再補正しません。

Crの2項目だけでD/P Crと分類を表示できます。糖は任意で、0時間・4時間の両方を入力した場合にD/D0 glucoseを追加表示します。糖が未測定でも、推測値を入れる必要はありません。

総排液量はD/P Cr・D/D0 glucoseの計算と分類には不要です。注液量と4時間排液量を両方入力した場合だけ、4時間除水量を参考表示します。

検査手順

  1. 検査前にブドウ糖透析液を8〜12時間貯留し、先行液を完全排液する。引用手順では直前のイコデキストリン液を避ける
  2. 2.5%ブドウ糖透析液(または同等液)2,000mLを注液し、注液終了を0時間として4時間貯留する
  3. 4時間後に完全排液し、排液バッグを十分に混和して検体を採取する。同時期に採血する
  4. 除水量も評価する場合は排液量を記録する。注排液時間・清潔操作は施設手順で統一する
  5. 排液Cr / 血清Crから4時間D/P Crを計算
  6. 4時間排液糖 / D0糖(実測値または製剤の理論値)からD/D0 glucoseを計算
  7. 必要に応じて、4時間排液量 − 注液量から検査中の除水量を確認

日本透析医学会2019の簡便法を基本とし、検体採取はBaxterのFast PET手順に沿って具体化しています。先行貯留、注排液時間、体位なども結果に影響します。施設の標準手順を優先し、経時比較では条件を揃えます。

4時間D/P Crの読み方

古典的分類4時間D/P Cr処方検討の方向
Low / slow>0.34–0.50十分な貯留時間を確保してクリアランスを評価
Low average>0.50–0.65総Kt/V・除水・生活条件と合わせて処方
High average>0.65–0.81長時間貯留での除水低下に注意
High / fast>0.81–1.03短時間交換・APD、長時間貯留でのイコデキストリンなどを検討

境界値の含め方はおしえてPDのFast PET計算と古典的参照図に合わせ、各区分の上限をその区分へ含めます。範囲外は無理に分類せず、検体・単位・採取時刻を確認します。古典的4分類は便利な要約ですが、D/P Crは連続値です。自施設の分布と同じ患者の前回値も確認します。High/fastは「よく透析できる」、Low/slowは「腹膜が悪い」という意味ではありません。

D/D0 glucoseは補助指標

古典的分類4時間D/D0 glucose
High / fast>0.12–0.26
High average>0.26–0.38
Low average>0.38–0.49
Low / slow>0.49–0.61

D/D0 glucoseが低いほど浸透圧勾配が早く失われることを示します。レギュニールLCa 2.5の混合後ブドウ糖濃度は2.27%で、日本透析医学会2019はD0 glucoseの理論値2.27 g/dL(2,270 mg/dL)を使用できるとしています。D/P Crと分類が一致しない場合はD/P Crを優先します。

例示症例の読み方

Fast PETはレギュニールLCa 2.5 2,000mLで実施しました。4時間後の血清Crは5.0mg/dL、糖干渉補正後の4時間排液Crは2.85mg/dL、4時間排液糖は1,200mg/dLです。D0 glucoseは製剤の理論値2,270mg/dLを使用し、総排液量は不明のため除水量は計算していません。

計算結果読み方
D/P Cr = 2.85 ÷ 5.00.57Low average:小分子溶質移動は比較的遅い
D/D0 glucose = 1,200 ÷ 2,2700.53Low / slow相当:補助所見

排液Crは糖干渉補正後、血清Crは4時間値です。2つの分類は一致しませんが、主指標であるD/P CrからLow averageとして評価します。

小分子クリアランスが不足する場合は、より長い貯留時間が選択肢になります。ただし、PET分類だけで処方を変更しません。この例では総週間Kt/Vが約1.70で、浮腫などの体液過剰を認めず、生活にも適合しています。さらに尿毒症状・栄養状態・K・HCO3−・リンなどにも問題がないことを確認したうえで、現行処方を継続して経時評価する判断は合理的です。これらの追加項目は提示データだけでは確認できないため、正常と仮定せず診療時に確認します。

この例では総Kt/Vの約72%が残存腎分です。尿量・残存腎クリアランスが低下した場合は、同じPD処方でも総Kt/Vが低下し得るため、処方を再評価します。

フォローでは、症状、体重・血圧・浮腫、日常の除水量・尿量、総週間Kt/V、PETの経時変化を確認します。クリアランス不足、体液量悪化、残存腎機能低下、生活上の支障が出た時点で貯留時間や交換条件を見直します。

4時間除水量は注排液差を示す別の結果です。単回の負値だけで限外濾過不全を確定せず、日常の除水量、注排液トラブル、使用液、体液量と合わせて評価します。

Fast PETで分からないこと

  • 限外濾過不全の原因
  • 自由水輸送・aquaporin経路の障害
  • カテーテル位置不良、リーク、不完全排液
  • 被囊性腹膜硬化症(EPS)

除水不全を疑う場合は日常の除水量と機械的問題を確認し、施設手順に応じて3.86% glucose / 4.25% dextrose PET、1時間Na dipなどを追加します。

いつ測るか

  • 初回:ISPD 2021はPD開始後6–12週を推奨
  • 定期:日本透析医学会2019は少なくとも年1回が望ましいとしている
  • 臨床的必要時:除水量低下、体液量悪化、処方反応の変化など
  • 腹膜炎後:炎症による一過性変化を避け、治癒後に十分な間隔を置く

結果を処方へつなげる順番

  1. 検査が正しく行われたか:回収漏れ、時間、液濃度、注排液、採血、検査室補正
  2. 患者が困っていることは何か:尿毒症状、体液過剰、除水不良、生活負担
  3. 残存腎機能はどれだけあるか:尿量と腎クリアランスの推移
  4. Kt/VとPETを別々に解釈する:除去量と移動速度を混同しない
  5. 変更後に再評価する:症状、体液量、除水、検査値、治療負担

本ページは医療者向けの参考計算・検査情報です。腹膜透析処方、透析液、交換回数、貯留時間、治療モダリティの決定を代替しません。個別診療では患者状態、使用製品、最新ガイドライン、各施設の検査・治療手順を優先してください。

AI一次医学レビュー:2026年10月1日。指摘箇所の根拠再確認・修正:2026年10月2日。RenalNote編集責任医師による最終確認:2026年10月4日。

参考文献

  1. 日本透析医学会. 腹膜透析ガイドライン2019:第二章 適正透析.
  2. 日本透析医学会. 腹膜透析ガイドライン2019:第四章 腹膜機能.
  3. Brown EA, et al. ISPD practice recommendations: Prescribing high-quality goal-directed PD. Perit Dial Int. 2020.
  4. Morelle J, et al. ISPD recommendations for evaluation of peritoneal membrane dysfunction. Perit Dial Int. 2021.
  5. Twardowski ZJ, et al. Peritoneal equilibration test. Perit Dial Int. 1987.
  6. Twardowski ZJ. The fast peritoneal equilibration test. Semin Dial. 1990.
  7. NKF-DOQI. Clinical Practice Guidelines for Peritoneal Dialysis Adequacy. 1997.
  8. 滋賀腎・透析研究会. PD効率の計算 weekly Kt/V, weekly Ccr.
  9. おしえてPD. 腹膜透析 PET計算.
  10. バクスター株式会社. PET操作手順マニュアル.
  11. PMDA. レギュニールLCa腹膜透析液 電子添文(2026年3月改訂).
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この記事を書いた人

RenalNote編集部のアバター RenalNote編集部 内科医|RenalNote編集責任者

都内の総合病院に勤務する内科医。総合内科・腎臓内科での勤務経験をもとに、RenalNoteの記事企画・編集・医学レビューを担当しています。国内外のガイドラインと国内電子添文を照合し、臨床で素早く参照できる形に整理します。