FeNa・FeUNは、AKIの原因を考えるための補助指標です。低ければ脱水、高ければ腎性、と機械的には判断できません。 数値を患者背景と照らし合わせ、次に何を確認するかを整理します。
1分で確認する読み方
① まず、採取条件を確認する
- 血液・尿の採取時点、利尿薬・輸液の前後、CKDの背景を確認。
② 低値は「腎前性を支持する手がかり」
- FeNa <1%・FeUN ≤35%は古典的な目安。脱水の確定や輸液の指示ではありません。
③ 例外を確認する
- 利尿薬・CKD・敗血症・心不全では解釈に注意。FeUNも利尿薬の影響と無関係ではありません。
④ 合わなければ、患者の所見に戻る
- 循環・うっ血・尿沈渣・閉塞・経時変化から原因を再評価。腎前性と腎性が重なる場合もあります。
① 採取条件と計算の前提を確認する
FeNaはNa、FeUNは尿素窒素の「濾過された量に対する尿中排泄分画」を推定します。尿中濃度そのものや、腎機能の残存率を示す数字ではありません。
- 血液・尿は、できるだけ近い時点の検体で評価する。
- 利尿薬・輸液などの介入と、採取の前後関係を確認する。検体採取のために必要な治療を遅らせない。
- 過去Cr、尿量、CKD、血圧・体重の推移を先に確認する。
国内AKIガイドラインも、これらの指標を血行動態・病歴・尿沈渣などと合わせて評価する位置づけです。[1]
単位をそろえる
| 項目 | 使用式・入力の確認 |
|---|---|
| FeNa(%) | 100 × 尿Na × 血清Cr ÷(血清Na × 尿Cr) |
| FeUN(%) | 100 × 尿中UN × 血清Cr ÷(BUN × 尿Cr) |
| 単位 | 血清・尿Crはともにmg/dL。Naは血清・尿ともにmEq/L。BUN・尿中UNはともにmg/dL。 |
入力時の注意: 尿素濃度と尿素窒素(UN)濃度を混在させないでください。海外文献ではFeUNに相当する指標がFEUreaと表記されますが、計算には血液と尿で対応する物質・単位を使います。
② FeNa 1%・FeUN 35%をどう読むか
| 指標 | 古典的な目安 | 実際の読み方 |
|---|---|---|
| FeNa <1% | 腎前性を支持 | Naを保持している所見。脱水に限定しない。 |
| FeNa ≥1% | 腎前性の典型から外れる | 利尿薬やCKDでも上がり得る。腎性の確定ではない。 |
| FeUN ≤35% | 腎前性を支持 | 参考所見にとどめる。利尿薬使用中でも確定診断には使わない。 |
| FeUN >35% | 腎前性の典型から外れる | 腎前性を否定できず、腎性も確定できない。 |
閾値は病態を分ける絶対的な境界ではなく、研究によって定義・性能も異なります。境界付近の値だけで方針を切り替えません。[2–4]
FeNaが参考になりやすい場面
2022年のメタ解析では、FeNaは特に乏尿があり、CKD・利尿薬使用がない患者群で良好な診断性能を示しました。一方、CKDや利尿薬使用を含む集団では精度が低下します。すべてのAKIに同じ精度で使える検査ではありません。[2]
FeUNは「利尿薬使用中でも正確」ではない
FeUNは利尿薬使用時に補助的に使われますが、2024年のメタ解析では診断能に限界があり、FeNaを上回る代替指標とは示されませんでした。2026年のメタ解析は中等度の診断能を報告していますが、研究間のばらつきが大きく、根拠の確実性は低いと評価しています。[3,4]
つまり、FeNaが読みにくければFeUNだけで決める、という使い方は避けます。
③ 数字より先に確認したい例外
| 状況 | 何が起こり得るか | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 利尿薬使用中 | FeNaが高くなる。FeUNも変動する。 | 薬剤投与と採尿の時刻、投与前後の尿量・体重。 |
| CKD | FeNaの古典的閾値が当てはまりにくい。 | 過去の腎機能、今回のCr変化と尿所見。 |
| 敗血症 | FeNa・FeUNが低くても、腎実質障害を除外できない。 | 感染、循環動態、尿量・Crの経過。 |
| 心不全などのうっ血 | 体液過剰でも低値を取り得る。 | 浮腫、体重増加、呼吸状態、うっ血と灌流。 |
根拠:利尿薬・CKDとFeNaのメタ解析[2]、急性非代償性心不全の利尿薬前後の研究[5]、敗血症の観察研究[6]。
急性非代償性心不全の研究では、ループ利尿薬投与後にFeUNが変化し、35%の分類をまたぐ患者もいました。この結果は心不全集団の観察ですが、「FeUNは利尿薬の影響を受けない」と言い切れない根拠になります。[5]
重要: 「腎前性」と「脱水」は同義ではありません。FeNa・FeUNの低値だけを理由に輸液せず、体液不足とうっ血を区別して考えます。
④ 結果が食い違ったらどうするか
どちらか一方を正解にするのではなく、臨床所見との不一致を見直すきっかけにします。
- 循環と体液: 摂取量・喪失、血圧、体重、浮腫・呼吸状態を見直す。
- 尿所見: 蛋白尿・血尿・尿沈渣から、糸球体や尿細管の障害を考える。
- 閉塞・薬剤: 排尿状況や必要な画像評価、処方変更と腎機能悪化の時間関係を確認する。
- 経過: 尿量・Crと介入への反応を追い、暫定診断を更新する。
腎灌流低下と腎実質障害が重なることもあります。「腎前性か腎性か」の二択だけで整理しきれない場合があります。[1]
症例A:どちらも低く、体液不足の所見がある
下痢・摂取低下と体重減少があり、利尿薬使用のない患者。FeNa 0.4%、FeUN 25%。
→ 病歴と数値が整合し、腎前性要素を支持します。ただし、低値だけで原因を確定せず、診察所見に応じた介入後に尿量・腎機能を再評価します。
症例B:FeNaは高め、FeUNは低い
浮腫・体重増加のある心不全患者で、ループ利尿薬投与後。FeNa 1.7%、FeUN 30%。
→ 「FeUNが低いから脱水・輸液」とはしません。 利尿薬の影響とうっ血を考慮し、体液・循環評価から治療方針を判断します。[5]
症例C:低値なのにAKIが進行する
敗血症の患者。FeNa 0.5%、FeUN 28%ですが、乏尿とCr上昇が続いています。
→ 低値でも腎実質障害は否定できません。感染・循環への対応と並行して、他の原因や合併病態を見直します。[6]
以上は読み方を示す架空症例で、処方や個別の治療を推奨するものではありません。重篤な電解質異常・肺水腫などへの対応は、FeNa・FeUNの結果待ちにしません。AKIの初期対応も参照してください。
関連記事・計算ツール
- FeNa・FeUN・FeK計算ツール:検査値から排泄分画を計算する。
- AKIの初期対応:緊急性、CKD背景、原因検索と介入後の再評価を確認する。
本記事は医療従事者向けの参考情報です。検査値単独で診断・治療を決めず、患者の状態と施設の診療方針に基づいて判断してください。
根拠確認:2026年9月30日。本文内容は運営者確認済みです。
Evidence・参考文献
- AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016。CQ4-3。[国内版・日本腎臓学会/英語版全文]本稿では英語版の該当本文を照合。
- Abdelhafez M, et al. Diagnostic Performance of Fractional Excretion of Sodium for the Differential Diagnosis of Acute Kidney Injury: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clin J Am Soc Nephrol. 2022;17:785–797. DOI:10.2215/CJN.14561121
- Abdelhafez MO, et al. Utility of fractional excretion of urea in acute kidney injury with comparison to fractional excretion of sodium: A systematic review and meta-analysis. Am J Med Sci. 2024;368:224–234. DOI:10.1016/j.amjms.2024.04.021
- Pan HC, et al. Assessing the utility of fractional excretion of urea in distinguishing intrinsic and prerenal acute kidney injury in hospitalised patients: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open. 2026;16:e100875. 全文
- Cox ZL, et al. Effect of Loop Diuretics on the Fractional Excretion of Urea in Decompensated Heart Failure. J Card Fail. 2020;26:402–409. 全文
- Vanmassenhove J, et al. Urinary output and fractional excretion of sodium and urea as indicators of transient versus intrinsic acute kidney injury during early sepsis. Crit Care. 2013;17:R234. 全文
