成人インフルエンザの治療|内服・点滴の選び方と肺炎合併時の対応

薬を選ぶ → 肺炎に対応する → 再評価する。 まずはこの3つを押さえます。

薬剤に関する注意: 成人の治療用量を示した参考情報です。腎機能・患者状態・最新電子添文・施設基準を優先してください。小児・予防投与は対象外です。

成人インフルエンザ治療:投与経路の選択、5剤比較、肺炎対応と再評価
成人インフルエンザの治療:投与経路・5剤比較・肺炎対応・再評価。最新電子添文・施設基準を優先してください。

1分で確認する治療の流れ

① 抗ウイルス薬を選ぶ

  • 飲める・吸える・腎機能で選ぶ。入院・重症・高リスク例は、確定検査待ちで開始を遅らせない。

② 肺炎なら細菌合併を評価

  • 入院肺炎・重症・再悪化は抗菌薬も検討。肺炎・細菌感染の所見がなければ予防投与は不要。

③ 治療反応を見直す

  • 呼吸・循環・摂取量・腎機能を追い、48〜72時間で抗菌薬を見直す。

① 抗ウイルス薬を選ぶ

最初にSpO₂・呼吸数・血圧・意識・摂取量を確認。呼吸不全・ショック・急速な悪化は入院/集中治療の評価へ。 高齢・妊娠・CKD/透析・免疫抑制などは重症化リスクです。[1,2]

外来・非重症の簡単な選択フロー

  1. 内服できる経口薬
  2. 内服が難しい → 確実に吸入できる吸入薬
  3. 内服・吸入とも難しい点滴薬

投与経路を選ぶための目安です。吸入薬は内服困難時だけに限定されません。入院例は経口・経管オセルタミビルを軸に検討し、入院=点滴とはしません。[1,2]

5剤を「経路」と「回数・期間」で比較

経路薬剤成人の参考用量回数・期間
経口タミフル等オセルタミビル1回75mg・1日2回5日間
経口ゾフルーザバロキサビル80kg未満40mg/80kg以上80mg単回
吸入イナビル粉末ラニナミビル40mg(20mgを2容器)単回
吸入リレンザザナミビル1回10mg・1日2回5日間
点滴ラピアクタペラミビル300mg・15分以上通常単回

単回=1回の投与で完了する用法。5日間=1日2回を5日間。 腎機能・重症度による変更は別途必要です。[3–7]

  • 開始時期: 早期、原則48時間以内。入院・重症・高リスクでは48時間後も治療を検討します。迅速抗原陰性だけでは除外しません。[1,2]
  • ゾフルーザ: 成人外来の選択肢。重症・免疫不全例の単独治療は慎重に判断。Ca・鉄・Mg等を含む制酸薬/サプリとの同時服用にも注意します。[1,9]
  • 吸入薬: 手技・吸気能力、喘息/COPD、乳蛋白アレルギーを確認。粉末をネブライザー・人工呼吸器へ入れないでください。[6,7]
  • ラピアクタ: 重症化のおそれがある患者では600mgを15分以上かけて1日1回。反復は個別判断で、3日以上の経験は限られます。[5]

軽症低リスクへの投与は一律必須ではありません。国内・WHO等で推奨に差があり、48時間後の重症例治療は国内添文のデータ制限と国際指針を区別して判断します。[1,3,5,9,10]

腎機能低下時はここを確認

オセルタミビル:成人・治療用量(国内添文)[3]

Ccr(mL/min)用法
>3075mg・1日2回・5日間
>10〜3075mg・1日1回・5日間
≤10推奨用量未確立。透析条件を含め個別確認。

ペラミビル:成人1回量(国内添文)[5]

Ccr(mL/min)通常/重症化リスク時
≥50300mg/600mg
≥30〜<50100mg/200mg
≥10〜<3050mg/100mg
<10・透析用量・透析とのタイミングを個別確認。

海外用量表と混ぜず、透析例に通常量をそのまま適用しません。AKIでは推算Ccrだけで固定せず、尿量・Crの経時変化も確認します。→ Ccr計算

② 肺炎なら細菌合併を評価

息苦しさ・低酸素・胸痛・再発熱があれば胸部画像などで肺炎を評価。重症例は血液/喀痰培養等を採取し、治療を遅らせません。[2,8]

  • 肺炎・細菌感染の所見なし: 予防的な抗菌薬は不要。
  • 入院肺炎・重症: 抗ウイルス薬+経験的抗菌薬。
  • いったん改善後の再悪化: 二次性細菌性肺炎を疑い、検索・治療。
  • 軽症外来の肺炎: 基礎疾患、細菌合併の疑い、再診の可否で個別判断。ウイルス陽性だけで細菌感染を否定しない。[2,11]

市中肺炎カバーの基本

場面抗菌薬の選択例
外来・細菌性肺炎を疑うアモキシシリン/クラブラン酸など。必要なアモキシシリン量の確保を含め施設処方を確認。
一般病棟・細菌性肺炎を疑うセフトリアキソン または SBT/ABPC
非定型病原体を疑う・重症CAPマクロライド併用など、非定型病原体もカバーする方針を検討。

SBT/ABPC=スルバクタム/アンピシリン。非重症の全例にマクロライド・抗緑膿菌薬を加える必要はありません。[8]

点滴処方の参考例

  • セフトリアキソン:2g・1日1回。 国内添文通常量は1日1〜2g、重症時は最大4gを2回に分けます。[8,12]
  • SBT/ABPC:1回3g。 国内添文は肺炎通常1日2回、重症時は最大1日4回。国内肺炎指針ではCcr >50mL/minで1日3〜4回の記載があり、重症度・腎機能・施設基準で間隔を決めます。[8,13]

腎機能の注意: セフトリアキソンは高度腎障害で血中濃度を頻回測定できない場合、国内添文では1日1gを超えないよう注意。SBT/ABPCも腎機能で量・間隔を調整します。

MRSAを考える場面

重症・急速悪化・壊死性/空洞性肺炎・MRSA検出歴では、バンコマイシンやリネゾリド等を含む初期カバーを検討。培養結果で必要性を見直します。[2,8]

広域化は一律にせず、耐性菌歴・最近の入院/静注抗菌薬・地域の感受性で判断。院内発症・強い免疫抑制は別途評価し、薬剤アレルギー・相互作用も確認します。[8]

③ 治療反応を見直す

  • 毎日: 呼吸・酸素需要、循環、摂取量・尿量、腎機能。
  • 48〜72時間: 培養と臨床経過で抗菌薬の継続・狭域化・中止を検討。
  • 悪化時: 日数を待たず再評価。再発熱、息苦しさ、意識変化、摂取不能は再受診の目安。[2,14]

細菌感染を支持せず臨床的に安定していれば抗菌薬の早期中止を検討します。細菌性肺炎の期間は原因菌・重症度・反応で決め、CRPだけ、あるいは「一律3日」で決めません。ステロイドもインフルエンザ肺炎自体には一律追加しません。[2,8,11,14]

関連記事・計算ツール

根拠確認:2026年10月4日。

参考文献

  1. CDC. Influenza Antiviral Medications: Summary for Clinicians. 2026-03-10更新。
  2. IDSA. 2018 Seasonal Influenza Clinical Practice Guideline. 治療開始、細菌合併、重症例、再評価、ステロイド。
  3. PMDA. タミフルカプセル75 電子添文. 2024年10月改訂。
  4. PMDA. ゾフルーザ錠・顆粒 電子添文. 2026年9月改訂。
  5. PMDA. ラピアクタ 医療関係者向け情報・電子添文. 2026-10-04確認。投与法・反復・腎機能調整は第6・7項。
  6. PMDA. イナビル吸入粉末剤20mg 電子添文. 2024年10月改訂。
  7. GSK. リレンザ 電子添文. 2024年10月改訂。
  8. 日本呼吸器学会. 成人肺炎診療ガイドライン2024. CAP治療:p.33–38、代表的薬剤用量:p.228–231、短期治療:CQ03。
  9. 日本感染症学会. バロキサビル マルボキシルの使用についての新たな提言. 2023-04-07更新。
  10. WHO. Clinical practice guidelines for influenza. 2024. あわせてWHO公式解説:インフルエンザの治療を参照。
  11. ATS. Diagnosis and Management of Community-acquired Pneumonia: An Official ATS Clinical Practice Guideline. 2025. ウイルス陽性肺炎の抗菌薬・治療期間。
  12. PMDA. ロセフィン 電子添文. 2026年6月改訂。
  13. PMDA. ユナシン-Sキット静注用 電子添文. 2025年9月改訂。
  14. ATS/IDSA. Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. 2019. インフルエンザ陽性CAPの初期抗菌薬と48~72時間後の中止検討。2025年更新部分は文献11を優先。
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この記事を書いた人

都内の総合病院に勤務する内科医。総合内科・腎臓内科での勤務経験をもとに、RenalNoteの記事企画・編集・医学レビューを担当しています。国内外のガイドラインと国内電子添文を照合し、臨床で素早く参照できる形に整理します。