低K血症では、まず緊急性を確認し、「尿へKを失い続けているか」を病歴と検査から考えます。尿中Kの数字だけで原因を決めず、酸塩基平衡・血圧・薬剤歴と組み合わせます。
計算する場合はこちら → FeK計算ツールを開く

1分で確認する原因検索
① 緊急性を先に確認
- K <2.5 mEq/L、不整脈・心電図変化、強い筋力低下では原因検索と並行して緊急対応。
② 病歴と採血・採尿をそろえる
- 下痢・嘔吐・薬剤歴を確認。採血はK・Cr・Mg・酸塩基、原因が不明なら同時期の尿K・Cr・Cl。
③ 尿中K排泄を評価
- 尿K/Cr比・FeKで、腎からの喪失を考える。 補充・利尿薬・腎機能の影響に注意。
④ 酸塩基・血圧で原因を絞る
- アシドーシスか、アルカローシスか。高血圧はあるか。 尿Clやレニン・アルドステロンは状況に応じて追加。
① 緊急対応が必要かを判断する
K <2.5 mEq/Lは重症の目安です。不整脈、心電図変化、麻痺や呼吸筋力低下があれば、数値だけで待機せず、モニタリングできる環境で上級医・専門医へ相談します。2.5以上でも症状や心疾患などの背景によって緊急性は変わります。[1,2]
- 心電図とKの経時変化を確認する。
- Cr・尿量・Mgを確認し、必要なK補充と原因への介入を並行する。
- 検査値が臨床像と合わなければ再検するが、必要な治療は遅らせない。
本稿は成人の原因検索・検査値の解釈を扱います。K製剤の選択、投与量・速度は扱いません。実際の補充は国内電子添文・最新安全情報と施設の手順に従ってください。
② 病歴を先に見て、必要な検体をそろえる
まず聞くのは「喪失・摂取・薬剤」
下痢・嘔吐、摂取低下、利尿薬や下剤の使用・増量を確認します。処方薬だけでなく、甘草を含む漢方薬・一般用医薬品も確認します。インスリンやβ2刺激薬などによる細胞内移動も候補です。[2,3]
原因が病歴から明らかで経過も整合するなら、尿・内分泌検査を全例に追加する必要はありません。原因不明、遷延、再発、補充しても改善しない場合に評価を広げます。[2]
採血 → 尿検査の順で確認
| 確認するもの | 検査・記録 |
|---|---|
| 血液 | K、Na、Cl、Cr、Mg。HCO3−・血液ガスで酸塩基平衡を確認。 |
| 尿(原因不明時) | 随時尿K・Cr。アルカローシスでは尿Clも確認。 |
| 甲状腺機能(症状に応じて) | 筋力低下・麻痺/周期性発作ではTSH・FT4、必要時FT3を確認。[10] |
| 採取条件 | 採血・採尿時刻、K補充・輸液・利尿薬の前後、尿量。 |
可能なら補充などの介入前に、血液と尿を近い時点で採取します。ただし、採尿や24時間蓄尿のために治療を待ちません。補充後の値は「補充後」として解釈します。[3,4]
③ 尿中K・尿K/Cr比・FeKをどう読むか
尿中K濃度だけでは決めない
尿K濃度(mEq/L)は尿の濃さに左右されます。薄い尿では、Kを失っていても低く見えることがあります。尿K/Cr比や排泄量で補い、病歴との整合性を見るのが基本です。[3,5]
以下は低K血症があるときの参考値です。健常者の基準範囲や、単独で診断できる境界ではありません。
尿への排泄が少なければ、腎臓がKを保持している可能性を考え、消化管喪失・摂取不足・細胞内移動を確認します。「尿に出ていない=体内のKは不足していない」ではありません。 介入後の値や腎機能低下では、二分せず経過と合わせて読みます。[2,5]
| 指標 | 腎からのK喪失を疑う目安・限界 |
|---|---|
| 尿K/Cr比 | >13 mEq/gCrが一つの目安。筋肉量・採取時点の影響がある。[3] |
| 24時間尿K排泄量 | >20 mEq/日が一つの目安。蓄尿漏れ、摂取・補充量を確認する。[3] |
| FeK | 9.3%以上は既存ツールで示す研究由来の目安。CKD・AKIや治療後に同じ診断精度を当てはめない。[4,6] |
尿K/Cr比には2 mmol/mmol Cr(約18 mEq/gCr)を用いる解釈法もあります。13と18は同じ値の単位換算ではなく、資料・評価条件が異なる目安です。境界付近を無理に二分せず、再検や臨床所見で判断します。[5]
式と単位
- 尿K/Cr比(mEq/gCr)=100 × 尿K(mEq/L)÷ 尿Cr(mg/dL)
- FeK(%)=100 × 尿K × 血清Cr ÷(血清K × 尿Cr)
- FeKではKを血清・尿ともmEq/L、Crを血清・尿ともmg/dLにそろえる。
- 24時間尿K(mEq/日)=尿K(mEq/L)× 24時間尿量(L/日)。
FeKは濾過されたKに対する尿中排泄分画の推定値であり、腎機能の残存率でも、体内Kの欠乏量でもありません。[4,6]
FeKの「9〜10%」はどこから?
Liらの2020年の診断研究(低K血症130例)では、治療開始前のFeK 9.29%をカットオフとした腎性K喪失の識別で、感度80.6%、特異度85.7%でした。ツールの9.3%はこれを丸めた値です。国内総説には>10%という目安もありますが、いずれも単独の確定診断には使いません。[3,4]
Pitfall:FeKだけで「腎性確定」「腎外性確定」にしない。 腎機能、利尿薬、補充・採取時点を確認します。現在の尿中K指標が低くても、それ以前の利尿薬作用や嘔吐に伴う喪失は除外できません。[5,6]
④ 酸塩基・血圧と組み合わせ、次の検査へ
| 組み合わせ | 次に確認すること |
|---|---|
| 代謝性アシドーシス | 正常AG性なら下痢などの消化管喪失、腎性喪失が疑わしければ尿細管性アシドーシス。AG上昇なら血糖・ケトンなどからDKA等も評価。 |
| 代謝性アルカローシス+血圧正常〜低値 | 嘔吐・胃液吸引・利尿薬。尿Clが低ければCl喪失を、高値が続けば利尿薬やBartter/Gitelman症候群などを検討。 |
| 高血圧+腎性K喪失(特にアルカローシス) | 原発性アルドステロン症、甘草による偽性アルドステロン症など。薬剤確認とレニン・アルドステロン測定。 |
| 明らかな代謝性酸塩基異常がなく、急に低下 | 細胞内移動・薬剤・周期性四肢麻痺を検討。筋力低下・麻痺/周期性発作では甲状腺中毒性周期性四肢麻痺も鑑別し、TSH・FT4(必要時FT3)を確認。[10] |
代謝性アルカローシスでは、尿Cl <20 mEq/Lなら嘔吐・胃液吸引などを、≥20 mEq/Lが持続するなら利尿薬作用・尿細管疾患などを検討します。境界付近は再検し、利尿薬の服用時期や体液量と合わせて判断します。[3,5]
嘔吐でも、腎からKを失います。 胃液からの直接喪失だけでなく、体液量減少やアルカローシスに伴う腎性K喪失が加わるためです。2026年の86例の後ろ向き研究でも、嘔吐関連群と尿細管疾患群は尿K/Cr比・FeKだけでは区別できませんでした。尿Clや病歴を組み合わせます。[3,9]
下痢でも腎性K喪失が重なるなど例外があり、この表は確定診断ではなく追加評価の方向づけです。[5]
高血圧を伴うなら、採血条件にも注意
国内PAガイドラインでは、低K血症を伴う高血圧は原発性アルドステロン症の高頻度群です。低K自体がアルドステロンを低く見せるため、低Kの状態でスクリーニングが陰性でも除外せず、K補正後に再検します。降圧薬の影響・測定法・採血条件も確認し、休薬は安全性を優先して専門医と相談します。[7,8]
改善しなければ、Mgと持続する喪失を見直す
低Mg血症があるとK補充だけでは改善しにくくなります。K・Mg・腎機能・尿量の経過と、下痢や薬剤などの原因が続いていないかを再評価します。原因不明の腎性喪失、再発・難治例では腎臓内科へ、内分泌疾患が疑わしければ内分泌内科とも相談します。[2]
計算結果を患者背景に戻して読む例
架空例: 血清K 2.8 mEq/L、血清Cr 0.8 mg/dL、尿K 40 mEq/L、尿Cr 80 mg/dL。
- 尿K/Cr比:100 × 40 ÷ 80 = 50 mEq/gCr
- FeK:100 × 40 × 0.8 ÷(2.8 × 80)= 約14.3%
低K血症にもかかわらず、尿への排泄が抑えられていない可能性を考えます。ただし、この2つの値だけでは原因は決まりません。 利尿薬・補充の前後を確認し、酸塩基平衡、血圧、尿Cl、Mgから絞り込みます。[3,4]
関連記事・計算ツール
- FeK計算ツール:血液・尿検査から排泄分画を確認。
- FeNa・FeUNの読み方:AKIで使う尿指標の役割と限界。FeKとは目的が異なります。
- AKIの初期対応:腎機能悪化・乏尿を伴うときの評価。
本記事は医療従事者向けの参考情報です。個別診療の最終判断は患者状態・最新情報・施設基準を踏まえて行ってください。編集・AI利用方針 / 誤り・更新情報のご連絡
医師による内容確認:2026年10月22日。根拠再確認:2026年10月22日(甲状腺機能の確認を追記)。数値は対象・採取条件を伴う参考値です。
Evidence・参考文献
- NHS Specialist Pharmacy Service. Treating acute hypokalaemia in adults. 2024年8月14日公開。公式解説。重症度・安全性を参照し、英国の補充用量は転載していません。
- Clase CM, et al. Potassium homeostasis and management of dyskalemia in kidney diseases: conclusions from a KDIGO Controversies Conference. Kidney Int. 2020;97:42–61. KDIGO公開本文。診療ガイドラインではなく会議報告です。
- 長浜正彦.III.低カリウム血症.日本内科学会雑誌.2022;111:917–925.DOI:10.2169/naika.111.917。国内総説。
- Li J, et al. Diagnostic value of parameters from a spot urine sample for renal potassium loss in hypokalemia. Clin Chim Acta. 2020;511:221–226. PubMed・抄録。診断研究。
- Kamel KS, Halperin ML. Use of Urine Electrolytes and Urine Osmolality in the Clinical Diagnosis of Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Disorders. Kidney Int Rep. 2021;6:1211–1224. DOI:10.1016/j.ekir.2021.02.003。生理学的解釈と限界を扱う総説。
- Elisaf M, Siamopoulos KC. Fractional excretion of potassium in normal subjects and in patients with hypokalaemia. Postgrad Med J. 1995;71:211–212. PubMed・抄録。古い観察研究であり、万能な基準値の根拠とはしていません。
- Naruse M, et al. Japan Endocrine Society clinical practice guideline for the diagnosis and management of primary aldosteronism 2021. Endocr J. 2022;69:327–359. 国内ガイドライン英語本文。
- Endocrine Society. Primary Aldosteronism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. 2025年7月14日公開。公式推奨・Technical remarks。
- Lin W, et al. Investigating the role of urinary electrolyte parameters in the differential diagnosis of hypokalemia. Clin Nephrol. 2026 Aug 25. doi:10.5414/CN112140. PubMed・抄録。正常血圧・腎性K喪失を呈する86例の後ろ向き研究。
- GeneReviews. Hypokalemic Periodic Paralysis. NCBI Bookshelf。低K血症と筋力低下・麻痺における甲状腺機能の確認を参照。